100マス計算以前
基礎学力低下と100マス計算
文部科学省が先般公表した、全国一斉の学力テスト（教育課程実施状況調査）の結果によると、基礎的な学力の低下が深刻だそうです。この基礎的な学力は、昔から「読み・書き・そろばん（計算）」として重視されてきました。その中の計算力を高める一つの方法として、ずっと以前から100マス計算がありました。それが今マスコミにも取り上げられ、新たなブームとなりつつあります。確かに、100マス計算は問題数を多くこなす（練習する）上で非常に優れた方法です。問題を数多くやれば、計算する正確さと速さを向上させるなどの効果があります。私も学童保育での夏休みの期間、よく子ども達にやらせたものです。
100マス計算の落とし穴
しかし、100マス計算は決して足し算・引き算・かけ算の「意味や仕方」を教えるものではないのです。そして、ここに100マス計算以前にある危険な落とし穴が存在します。そもそも足し算やかけ算が出来ないと100問どころか１問も計算が出来ないのです。例えば、同じ１年生に１ケタ足す１ケタの100マス計算をやらせても、計算の遅さの原因が個人によって違い。足し算のやり方が十分理解できていない子どもは、何回100マス計算をやっても計算の速さは向上しません。この様な子ども達には、個別に理解できていない点を見つけ出し（傍で足し算をする過程をよく見て）、それを丁寧に教えるしか計算の速さを向上させる事は出来ません。
かけ算100マス計算での注意
同様に、かけ算100マス計算も注意して取り組む必要があります。九九の覚えが十分でないまま、かけ算100マス計算をやると、かける数とかけられる数のうちどちらか一方が順不同に出てくるので、かえって九九そのものを覚える事をも妨げかねません。（「九九をかんがえる」参照）
当然のこととして、これではかけ算の速度が上がる道理がありません。かけ算100マス計算は、必ず九九を完璧に暗記してから取り組む事が大切だと思います。
100マス計算心構え
また、子ども達に100マス計算を提起する上で忘れてはならないのが、「計算の速さは早ければ良い」が、決して「計算が遅くても悪い事ではない」という教え手の考え（思想・精神）を堅持して100マス計算に臨む事です。すべての子どもは向上の過程にあり、その到達がその時点で「他の子より計算が遅くても、その子が将来計算が速くなる事は絶対に否定できない。」言い換えれば、誰でも計算が遅かった時があるのです。この心構えが、時間を計って100マス計算を取り組む時に教え手には必要なことだと思います。そして、少しでも計算が速くなれば、大いにほめてあげましょう。
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