あの町この村に、子どもらの遊ぶ笑顔を求めて ユニット折り紙
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折々の折り紙 (ミニエッセイ集) 目次へ

 遊び学ブログにおいて、「折り紙」についての思いつきなどを書き綴ったものをまとめて転載したものです。なお、必要に応じて加筆・修正を施しております。

 折り紙の晴れと褻(ハレとケ)/2003年12月12日

 折り紙には、使う紙の形で大きく二つに分ける事が出来る。正方形とそれ以外の紙だ。それ以外の紙で大半を占めるのが、長方形それも辺の比率が1対ルート2のB5やA5などの定型の長方形の紙だ。ノート・ザラ半紙・新聞紙・チラシなどの紙だ。
 この長方形の紙は、日常普段の生活の中で極めて簡単に手に入る紙でもある、反対に正方形の紙はある意味では特殊なわざわざ買い求めなければならない紙なのだ。
へそひこうき  だから、普段するような折り紙あそびには長方形の紙が向いており、折り紙飛行機などはその代表格だ。今も昔も新聞の折り込みチラシを使って紙飛行機が折られているように、長方形折り紙はポピュラーな折り紙なのだ。
 一方、奇麗な色の着いた折り紙(一般には色紙と呼ばれていた。)を使って折られたものは、それであそぶことよりどちらかと言えば飾り・作品として飾っておかれる場合が多い。長方形折り紙を褻(ケ)の折り紙と見なすと、正方形折り紙は晴れ(ハレ)の折り紙と言える。
 かつてこども達は、「ハレとケ」をごく自然に使い分けていた。言い換えれば、「ケ」の時に長方形折り紙をあそび楽しみながら、「ハレ」の時の正方形折り紙の作品を作る腕を磨いていたとも言える。さて、今の子はどうだろうか・・・・・


 ユニット折り紙事始め:折り紙随想/2004年06月08日

 私は、折り紙なかでもユニット折り紙に大きな魅力を感じ、創作を含めいろんな作品を折り続けてきた。そのきっかけとなったのは、ユニット折り紙の古典ともなった>薗部式ユニットに出会った時だ。
薗部式ユニット  まずその美しさに惹かれた。同じ形がお互いに対称的な位置関係を持って、整然と組み合わされ立体を形成する美しさだ。これは、正多面体が持っている美しさに起因しているわけだが、それに折り紙(色紙:いろがみ)の色彩が加わって美しさを倍加している。
 そして、ユニット折り紙の素晴らしさは、同じ形に折った部品(ユニット)を組んでいく事によって一つの作品を作るのだが、その組み上げる過程のパズル的面白さが、これまた魅力を増す要素ともなっている。パズル好きの私が、ユニット折り紙にのめり込んだ一番の理由だ。
 さらに、あれこれ苦労したうえに完成させて時の、充実感は折った者でしか味わえない喜びをもたらしてくれる。この様に、ユニット折り紙は折り紙の機能的な特性をいかんなく発揮した優れものだと思う。
 もちろん、私自身の独自な性格や感性があって、これらのユニット折り紙の魅力を感じ取れたかも知れないが、学童保育所のこども達(高学年)の様に夢中になってくれた子も多かった。もし、暇をもてあますような状況になられたら、ぜひ試していただきたいものだ。


 折り紙と算数:幾何学的認識のひとつのバックグランドとしてのあそび/2004年06月11日

 小学校としてはピカピカの第1学年から図形の学習が始まる。今まであそびをはじめとする生活の中で親しんできた丸・三角・四角という「形」を幾何学として体系的に学び始めるのだ。
 まだ、低学年のうちはいいものの、高学年になって半径・直径・平行・垂直などのまだ幾何学では初歩であるが、難しい?幾何学的概念が出てくると、そろそろ「図形の学習」が嫌いになってくるこどもが出始める。
 ましてや、これが中学校・高等学校へと学習の水準が本格的幾何学のレベルに達すると、急激に幾何学大嫌いという子ども達が続出する。それは、それまでの体系的な学習の積み立て?をあざ笑うかのようでもある。
 そうした一方で、幾何学の神秘的とも言える不思議さ・美しさに魅了され、幾何学が好きで好きでたまらないこども達も存在することも、周知の事実だ。
 では、この両極端の分かれ目は何だろうかと言うことだ。ひとつは、ごく当たり前の事になるが図形というものに興味を示し得たかどうかだ。それは、はじめて「図形」と言う概念で教えられる小学校教育なかでも低学年での教育での関わりが重要と考えるが、それについては別の機会にゆずることにする。
 つぎに、こども達が日常の生活の中でどれだけ図形に親しんでいるかどうかが、図形・幾何学の好き嫌いを導きうる要素(バックグランド)の一つとなると考えている。
 こどもの生活の中ではあそびが効果的で、図形を意識して活動をするのが、タングラム・ジグソーなどのパズル類、組み立てブロックあそび、お絵かきあそびなどいろいろある。そんなあそびのなかで、日本において歴史と伝統のある折り紙あそびに論点をしぼる。
 折り紙は紙を折ると言っても、周知のようにでたらめに折っていくのではなく、規則正しい折り方に則(のっと)って折っていく。そのひとつ一つが幾何学の重要で基本的な法則・定理などに依拠しているのだ。
 例えば、折り紙を真半分に折るには二通りの方法があって、対角線(角の2等分線)で折って三角形にするか、辺の2等分線で折って長方形にするかのどちらかだ。また、特殊な折り方として頂点を辺の中点と重ねるような折り方もある。
 この様に、その意味は全く知らなくても自然に2等分線や頂点・中点などのイメージ形成が培われているのだ。こうした、幾何学における基本要素の慣れ度合いは、将来や進行中の幾何学学習の大切なバックグランドになり得る。
 さらに、折りあげる過程や結果に出現する様々な形、ユニット折り紙など立体的な形を見た経験の効果は、決して小さくはないと考えている。
 この様に、折り紙は幾何学学習を助けるひとつのバックグランドをつくるが、これはあくまでバックグランドであって幾何学的知識は学校等での幾何学教育が無くては成立し得ないことは言うまでもない。
 そして、折り紙が苦手な子のみならず、一般に折り紙は押しつけても、折り紙そのものを一層嫌いにしてしまい、効果はほとんど期待できない。親が、折り紙の楽しさを十分に味わうことが、一見回り道のように見えて実は近道なのだ。


 多面体の美しさ(合同の多重集合美):ユニット折り紙の魅力/2004年06月22日

 ユニット折り紙が「多面体の折り紙」と呼ばれるように、ユニット折り紙の魅力が多面体の美しさにあることは、前にも書いた。その多面体の美しさについての思いを綴っていく。
 多面体の代表格は正多面体だが、それはインフォシークのネット辞書:大辞林(国語辞典)によると、「面がすべて合同な正多角形でできており、どの頂点に集まる面の数も等しく、どの頂点における立体角も等しい多面体。(カッコ内引用)」となる。
ユニット折り紙  ここに、正多面体がかもし出す美しさが凝集されていると言って良い。「面がすべて合同な正多角形でできて」いる。たとえば、正三角形なら正三角形だけで覆い尽くされているのだ。
 このように、全く同じ形で埋め尽くされている美しさは、自然界ではミツバチの巣・魚の鱗・トウモロコシなど、人工物ではタイル壁・連子格子・瓦葺きの屋根・千枚田などに感じる美しさと共通だ。
 整然と同じ形が続く美しさに、人は太古の昔からひかれてきたことは、土器や青銅器などの文様にも少なからず現れていることにもうかがえる。合同形の集合美は時代を超えた普遍的な美なのだ。
 さらに、正多面体は「どの頂点に集まる面の数も等しく、どの頂点における立体角も等しい」と言う性質で、その同じ形の連続に同じ配置の仕方という二重構造で一層その美しさを強調しているのだ。
 このユニット折り紙の重層構造は、元の正多角形のすべての辺や内角がそれぞれすべて同じ(合同)と言うことを考えれば、ユニット折り紙は合同の多重集合体とも言える。そして、そこに神秘的とまでも言えるユニット折り紙の美しさの秘密があるのではないだろうか。


 ユニット折り紙の私的ルーツとしての『重ね箱』/2004年09月15日

 折り紙には、単独でも完成品となるものばかりでなく、ユニット折り紙や折り紙細工のように、ひとつでは作品となり得ず幾つかを組み合わせてひとつの作品を完成させるものがある。
 その両方の性質を兼ね備える中間的な存在が、「重ね箱」と呼ばれる伝統的な折り紙だ。これは、単独でも箱として立派な作品ではあるが、サイズの違う物をもう一つ作って蓋付の箱の作品としても楽しめる。
重ね箱  さらに、どんどんサイズが小さい物を数多く作り、ロシア人形のマトリョーシカのように入れ子にして楽しむことが出来る。開けても開けても次から次へと箱が出てくるものだ。
 私は、こどもの頃に数十個も作り、友達などに自慢して見せびらかせたことがある。この時は、市販されている奇麗な折り紙では勿体ない(貧乏じみてはいるが、それが普通の時代だった。)ので、藁(わら)半紙を切って作った。
 これは、前に日記にも書いた「ハレとケ」の折り紙で言えば、生まれはハレで育ちはケと言った折り紙と言える物だ。長方形の紙をわざわざ正方形に切って作る、かえって面倒な作り方をして作る。
 今、思い返してみてもおかしなくらいだが、こどもは思い立ったら先を考えずに一途に突き進む。これは、ある意味ではこどもの素晴らしくもあり、向こう見ずな行動でもあるのだ。
 ともあれ、好きとは言え、こどもの頃では同じ物をひたすら折る事に苦痛を感じずいられることは、こどものひとつの能力だろう。そして、現在の私のユニット折り紙にはまりこむ素地がこのころ作られたのだろう。私のユニット折り紙のルーツでもあるのがこの「重ね箱」だ。


 折り紙と物理学:より大きく、より小さく/2004年10月28日

 普通に折り紙を折っていれば、この地球の大自然の原理を感じ認識することなく時を過ごす。だが、極めて大きな作品や極めて小さな作品を折ろうとすると。この大自然の原理が大きく姿を現す。
 例えば、ユニット折り紙をやっていて、普通は多くて数十枚(ユニット)程度の作品を作っている。しかし、ユニット数が100を越えるようになると、状況ががらっと変わってくる。
 それは、何と地球の重力がその偉大な力をあらわすのだ。普通の大きさ(15cm角)と厚さの折り紙で、100ユニットを越える作品を組み上げてみると、何と!あの軽い紙の重さがものを言うようになり、形が歪んでくるのだ。
 宇宙空間にあるスペースシャトル内の無重力の下では、何百ユニットの作品も形はまったく歪まない。地上で形が歪むのは、まさに、紙に地球の重力が働くたまものだ。この紙と地球の取り合わせが面白い現象だ。
 ところで、このユニット折り紙もそうだが、作品が組み上げられるのも、そもそも考えれば摩擦力という自然の原理があるおかげだ。摩擦がなければ、せっかく組み上げた多くのユニット折り紙作品は、自然崩壊するだろう。
 こうしたわけで、大きな作品より小さな作品を作ることに、私の折り紙は方向転換するようになる。しかし、ここにも普段気にしていなかった事が、にわかにクローズアップされ大変気になる存在になってくるのだ。
ユニット折り紙  それは、紙には厚さがあると言うことだ。普通の15cmサイズの折り紙では厚さは、作る作品に大きな影響を与えるものは少ない。しかし、これが一辺が1cmぐらいになってくると、紙の厚さがきいてくる。 (右図:30ユニット)
 この厚さが作品を折っていく上で邪魔になってくるのだ。それもそのはずだ、同じ比率で考えると同じ厚さの紙なら15cmの折り紙に対して、1cmの折り紙の厚さは15倍になる計算だ。
 そして、この何倍にもなった厚さが、見かけ上の紙の硬さを増加させるのだ。だから、厚さと折り曲げにくさが相乗的に働き、ミニ折り紙は困難さを増す。
 だから、極小の折り紙作品を作る場合、極めて薄手の折り紙を使用する場合が多い。しかし、そうした折り紙は市販されていないし、また他の紙を転用するのもやっかいだ。


 野口さん(ディスカバリー)の折り紙/2005年08月11日

ユニット折り紙  スペースシャトル「ディスカバリー号」で野口さんがクルクル回していた折り紙は、一般的にはユニット折り紙と言われる折り紙です。そのユニットによく似たものをユニット折り紙で紹介していますので、挑戦しては如何でしょうか。
 なお、ほぼ同等のユニットが右記のユニット(UR002)です。画像クリックで該当ページにジャンプします。(折り図もあります。)


 ある小さな作品展から/2005年11月23日

 今日、2ヶ月に一度、ユニット折り紙を教えに行っている女性団体の作品展があった。と言っても、個人宅で開かれたもので、画像はそのユニット折り紙作品だが、他にも刺繍・ビーズ細工・油絵など様々なジャンルの作品が展示されていた。
ユニット折り紙  この女性のサークル的活動は40年以上の歴史があるそうだが、全般的にこの様な文化活動は、女性の方が活発なように思われる。最近では、熟年の男性のピアノや絵画などの余暇や趣味の活動も増えてきているようだが、まだ女性の活発さには及ばないようだ。
 こうした趣味の創造的活動は、脳を活性化しストレスをも軽減すると言われているが、平均的な寿命の長さでは女性に及ばない男性のみなさんも、もっと旺盛にこうした活動をして欲しいし、私もまたそうしていきたいと思っている。


 所謂、伝承折り紙について/2006年02月10日

 所謂(いわゆる)伝承遊びと言われる遊びにもいろいろあるが、その一つが伝承折り紙だ。多くの方が折り方はともかく知っているのが「折り鶴」だが、他にも「奴さん」「重ね箱」「兜」などがあるが、これらは基本的には正方形の紙を使って折る物だ。
お雛様  一方、「折り紙飛行機」「パンパンでっぽう」や、昨日紹介した「お雛様(ももたろう)」などの様に、長方形それも辺の比が1対ルート2の長方形の紙を使って折る一群の折り紙がある。
 この長方形折り紙は、正方形の紙と違って身近に豊富に有り、割りと手に入りやすいので、こども達のあそびの中にしばしば登場し、実際にあそびに使ったり、それであそんだりするので、「折り紙あそび」と言った方が適切だ。
 これらの正方形や長方形の紙を使って折る折り紙は、基本的には実際に折って教え教えられる関係のなかで、まさに伝えられてきた折り紙だ。特に、後者の長方形折り紙は、実際にあそぶと言うこども達の活動を通して伝えられてきた。
 ただ、最近の折り紙事情として、この伝承が実際に折る事よりも、本やビデオ最近ではインターネットを通して、人と人の間にメディアを通して伝えられる割合が増えてきている。
 反対に言えば、人と人が直接の人間関係や活動を通して伝承される割合が減ってきているのだ。特に、長方形の紙を使っての「折り紙あそび」は、そうしたあそびそのものが少なくなっているので、その傾向は著しい。


 オリグライド:ニュースに見るこどものあそび/2007年01月21日

 ネットニュースからひろった折り紙飛行機の話題についての感想を書いていく。【四角い紙を折って作った飛行機を飛ばして遊ぶ「紙飛行機」も玩具として登場。コナミの「オリグライド」は、飛行機の図柄に山線・折り線をつけたもの。(中略)野球やサッカーのテレビゲームで知られるコナミだが、オリグライドでは手で折り、体を使って飛ばすアナログの楽しさを訴えつつ、商品の幅を広げていく。】(【】内は記事から一部引用、Google ニュース/フジサンケイ ビジネスアイ:2007年1月21日)
 新聞折込のチラシなどを使って折る紙飛行機、こどもからこどもへ教え伝えることが影を潜めて久しい。そんな時代だから、この記事のような「折線つき紙飛行機セット」が大手玩具メーカーから販売されるのだろう。価格は1機250円程度だそうだが、高いといえば高いし、綺麗な機体が印刷され線通りに折れば確実によく飛ぶので安いと思えば安くもあるだろう。
 できれば、これを折り紙飛行機を楽しむ入り口として、次にはぜひチラシなどで自分で紙飛行機を折ってほしい。折線がない分、そこには工夫をすればもっとよく飛ぶ機体を発見できるかもしれないし、面白い飛び方の機種が生まれるかもしれない。
 そして、その折方を友達に教えてあげて、機構距離・滞空時間・曲技飛行を競い合うのもいいだろう。どなたかが作られた歌の歌詞にもあるように、自分で折る紙飛行機は、こどもたちの夢をのせて限りなく大空に向かって飛び出していくだろう。紙飛行機バンザイ!!

(ミニエッセイ集は、「遊び学ブログ」の記事を加筆・修正したものです。)

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